今回は須田景凪さんの「MOIL」について、歌詞やMVの意味を解釈&考察していきたいと思います。
映画「二ノ国」の主題歌として、そして何より須田景凪さんにとって初めての映画主題歌として書き下ろされた今回の「MOIL」は、2019年8月21日にリリースされる「porte」に収録されている新曲。
「バルーン」名義でボカロPとして活動していた須田景凪さんは2017年に改めて本人名義の活動を開始ましたが、最近ではアニメ「炎炎ノ消防隊」EDに「veil」が抜擢されるなど、今回の「二ノ国」での抜擢も含めて非常に精力的に活動しています。
自分もファンとして須田景凪さんの楽曲に普段から触れていますが、今回の「MOIL」もまたエモーショナルなメロディーと感傷的な歌詞が印象に残る名曲。そんな話題の須田景凪さんの新曲について詳しく見ていきましょう。
須田景凪「MOIL」歌詞やMVの意味を解釈&考察
ということで早速内容に入っていきたいと思いますが、今回話題を呼んでいるのが須田景凪さんの新曲「MOIL」。歌詞は以下のようなところとなっていました。
「MOIL」須田景凪
作詞・作曲:須田景凪思い出すのは砂を噛むような
茹だった焦燥と幼い白昼夢の続き
今となってはあの感触も笑えるほど
するり手からこぼれてしまった
故に永遠に無垢を望み
雲間にまだ目が向くのは何故大人になった
大人になってしまったみたいだ 左様なら
違う世界に交わる雲にでもなりたい
明日がいつか記憶になって
些細な言葉になる前に
今、募るこの想いをあなたへと伝えたいどんな形で どんな言葉で
どんな灯りで照らせば
どんな形で どんな言葉で
どんな灯りで照らせばあなたなしでは意味がないなど
感情は盲目だ 尚更また膨らむ欠落
生きてゆく度 より鮮明に胸の底で
別れが育つような気がした
故に懸命に腕を伸ばし
身勝手な光を追うのは何故大人になった
大人になってしまったみたいだ 左様なら
日々の中で揺蕩う風にでもなりたい
心がいつか飾りになって
安そうな夢になる前に
今、募るこの想いをあなたへと伝えたい夕凪に世界が身勝手に沈んでも
もう決して目を逸らしはしないだろう
輪郭は段々と曖昧に変わっていく
その様すら愛していたいんだ大人になった
大人になってしまったみたいだ 左様なら
違う世界に交わる雲にでもなりたい
明日がいつか記憶になって
些細な言葉になる前に
今、募るこの想いをあなたへと伝えたいんだどんな形で どんな言葉で
どんな灯りで照らせば
どんな形で どんな言葉で
どんな灯りで照らせば
須田景凪さんらしいエモーショナルで感情の込められた歌い方、そして嘆きにも似た「願い」「葛藤」そして「愛情」を彷彿とさせるような印象的な歌詞が耳に残る、須田景凪さんの楽曲の中でも個人的にとても好きな一曲。
特に後半の「夕凪に…」からラストサビにかけての畳み掛けは感情を揺さぶり、聴いている人の心を奪います。
そんな須田景凪さん珠玉の新曲「MOIL」ですが、楽曲や歌詞にはどういった意味合いが込められているのでしょうか。
そのためには映画主題歌であるということもあるので、映画「二ノ国」についてまずチェックしていく必要があります。まずは簡単に映画のあらすじから見ていきましょう。
映画「二ノ国」はユウとハルに迫られた究極の選択を描いた物語。
まず、今回須田景凪さんの「MOIL」が主題歌に抜擢された映画「二ノ国」のあらすじがこちら。
頭脳明晰で、心優しい秀才のユウ。
バスケ部のエースのハル。
そしてハルの恋人コトナ。
同じ高校に通う幼なじみの3人は、掛け替えのない親友だった。突然の事件が起きるまではー。
ある日突如ユウとハルが迷い込んだ見知らぬ場所、そこは想像を超えた魔法の世界「二ノ国」。現実(一ノ国)とは隣り合わせにある、この美しく不思議な世界で、2人はコトナにそっくりなアーシャ姫と出会う。どうやら二ノ国には、一ノ国と命が繋がっている”もう1人の自分”がいるらしい。
アーシャ姫に死の呪いがかけられたことをきっかけに、ユウとハルはふたつの世界に残酷なルールがあることを知る。二ノ国で尽きるはずの命を救えば、一ノ国の人間がその代償を払うことになるというのだ。
そして二ノ国ではアーシャ姫が、一ノ国ではコトナが、死の呪いにかけられていたー。
ふたりの彼女、救えるのはひとつの命ー
明るく健気なアーシャ姫を守りたいユウと、コトナを助けたいハルに突き付けられた残酷なルール、ふたりが下した<究極の選択>とはー。
ちなみにこの「二ノ国」はレベルファイブが提供するRPGゲーム作品「二ノ国」と同じコンセプトで作られた物語でありながら、ゲームとはまた違った別の作品として制作されています。
そのため原作プレイ経験のある人にとっても新鮮でオリジナルなストーリーとなっており、「新しい作品」として誰もが楽しめるような内容となっていました。
さらに、今回の映画「二ノ国」の製作総指揮・脚本を務めたのはレベルファイブの創業者でもある日野晃博さん。
日野晃博さんは「ドラゴンクエストⅧ 空と海と大地と呪われた姫君」や「レイトン教授」シリーズ、「妖怪ウォッチ」シリーズなどの数々の大ヒット作を手掛けてきたことでも知られており、ゲーム「二ノ国」の制作にも携わっています。
加えてスタジオジブリ作品を手がけてきたことでおなじみの百瀬義行さんと久石譲さんがそれぞれ監督・音楽を担当していることも含めて、錚々たる制作陣のもと制作された作品としても話題を呼んでいるのです。
映画「二ノ国」の物語はあらすじにもあるように、ユウとハルのふたりが「一ノ国のコトナ」「二ノ国のアーシャ姫」のどちらかの命しか救えない中で「究極の選択」を下していくという内容。
そんな話題作の主題歌を担当した須田景凪さんは、映画の脚本を読んだ上で楽曲を制作した旨を次のようにコメントで示していました。
最初に脚本を読ませて頂き、主人公ユウ達の純なひたむきさや、そこに渦巻く想いが色濃く印象に残りました。
作品の中で描かれる世界に添えるように、と思い音楽を作りました。
そうして制作された今回の新曲「MOIL」。そこに込められた想いや意味合いを読み解いていく上では、映画で描かれる「残酷なルール」を避けることはできないでしょう。
「一ノ国」と「二ノ国」を繋ぐ残酷なルール、途切れ行く世界線。
あらすじにもあったように「一ノ国:現実世界」と「二ノ国:魔法の世界」では命がそれぞれ繋がっており、一方の国で尽きるはずの命を救えば、もう一方の人間がその代償を払うことになります。
映画内では主人公のユウは「二ノ国」にいるアーシャ姫を愛し救いたいと願い、ハルは現実世界のコトナを愛し救いたいと願う。それぞれの愛情と想いがぶつかり合い、「葛藤」の中で物語が進んでいくというのがキーポイントでしょう。
実際に須田景凪さんの「MOIL」の歌詞にも、そういった理不尽で残酷なルールの中でもがき苦しむユウとハルを象徴したような言葉や、掴みたいけど掴めないものへのもどかしさを象徴するような言葉がいくつか見受けられました。
- 茹だった焦燥:うだるような焦りや苛立ち
- 白昼夢:空想や非現実的な幻想
- 雲間にまだ目が向く:空想を見続けている
- 違う世界に交わる雲になりたい:現実と非現実のどちらとも守りたい
- 身勝手な光を追う:追ってはいけないものを追ってしまう
- 揺蕩う風にでもなりたい:現実から目を背けてしまいたい
個人的な意訳も含まれていますが、こういったように歌詞の中にはユウとハルの迷い・苦しみ・葛藤・諦めを象徴するかのような言葉が何度も登場するのが印象に残ります。
サビ終わりの「どんな形で どんな言葉で どんな灯りで照らせば」という部分などはまさにそうでしょう。そこに続くのは「わからない」という言葉だと個人的に解釈していますが、理不尽なルールの中でどうしていいのかわからない気持ちを表した印象的な歌詞です。
また、そもそものタイトルである「MOIL」には、日本語では主に次のような意味があります。
- コツコツ働く
- 骨折り
- 苦役
直接「働く」という意味をつなげるとわかりにくくなりますが、このタイトルにも「ルールに縛られている」ということや「何かを犠牲にしなければならないことへの葛藤」が込められているのではないでしょうか。
映画のネタバレになるので深掘りはしすぎませんが、一ノ国と二ノ国は「どちらの世界も守り抜く」ということは不可能で、それと同時にユウとハルは「どちらの世界にも存在できない=自分が生きる世界を選ばなければならない」というようにも思えます。
つまり繋がってしまった2つの世界線は徐々に途切れていき、そういった中でコトナとアーシャ姫の「どちらを守るのか」という選択も迫られていくと。こんなにも残酷なルールがあっていいのかと嘆きたくもなりますが、それはユウとハルが一番痛感していることだと思います。
それでも僕は、「今募るこの想い」をあなたへと伝えたい。
ただ、そうして理不尽で残酷なルールの中で葛藤しながらも、それこそ「さよなら」と告げてしまいたくもなりながらも、「MOIL」では次のように「想いを伝えたい」という歌詞が印象に残ります。
明日がいつか記憶になって
些細な言葉になる前に
今、募るこの想いをあなたへと伝えたい心がいつか風になって
安そうな夢になる前に
今、募るこの想いをあなたへと伝えたい
サビの中にこうして「この想いを伝えたい」という歌詞が何度も出てくるのです。これはユウの想いなのかハルの想いなのかは定かではありませんが(おそらく両方だとも思える)、何れにしてもアーシャ姫とコトナという「大切な人」へ向けられた言葉だと思います。
「明日がいつか記憶になる」「心がいつか風になる」それはつまりどちらか一方の世界が終わりを遂げてしまうことや、ユウとハルが「究極の選択」を下すその時のことを表しているのでしょう。
そうして世界が終わる、現実と魔法の世界が途切れる。大切な人を犠牲にするか守り抜くか決める。そんな中でも「この想いをあなたへと伝えたい」というのは、ユウとハルの純粋な愛情や想いの強さの何よりの現れです。
どれだけ残酷なルールがあろうとも、それこそ「夕凪に世界が身勝手に沈む」ような逆らえない現実が立ちはだかろうとも、自分が愛する大切な人へのこの想いを伝えたい。たとえその想いが、叶わなくとも。
何より「曖昧になっていく輪郭すら愛していたい」という言葉は、そんな2人の純粋でありながらも儚さが滲む気持ちを象徴した印象的な歌詞なのではないでしょうか。
果たしてユウとハルはそれぞれの守りたい人を守ることができるのか、理不尽なルールや世界を打ち破ることができるのか、何の代償も無しに愛情を貫き通すことはできるのか。
須田景凪さんの「MOIL」では物語の結末ではなく2人の「想い」が純粋に描かれていました、この残酷でありながらも美しい「二ノ国」の物語の結末はぜひ劇場で。その後「MOIL」を聴くとまた新たな発見もあるのかもしれません。
まとめ
ということで今回は、須田景凪さんの「MOIL」についてチェックしてきました。
映画「二ノ国」は原作ゲームをプレイしてきた人間としてもとても楽しみに思っていますし、ましてやあの須田景凪さんが主題歌を務めているということで、ファンとしても見逃せない作品です。
今回はあくまで個人的な解釈や考察をしていきましたが、それぞれのファンが作品を受け取った感想や考察にも触れてみたいですね。ぜひ劇場へ映画を観にいき「MOIL」をそこで耳にした上で感じたことや思ったことも、気軽にシェアしていただければと思います。
それでは拙い文章ではありましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。記事が少しでもお役に立てたなら気軽にシェアしていただけたら嬉しいです。