今回はEve「バウムクーヘンエンド」歌詞やMVの意味を解釈&考察していきたいと思います。
2009年にニコニコ動画で歌い手としての活動を開始し2016年からは自身で作詞・作曲なども手がけているEveさんですが、そのキャリアは今年で10年目を迎えたということでもちろんその才能や実力は折り紙付き。
歌い手やボカロP以外にも自身のアパレルブランド「はらぺこ商店」で服のデザインも手がけているなど、マルチな分野で活躍しているまさに大注目のクリエイターと言っても異論はないでしょう。
そんなEveさんが手がける楽曲は中毒性のあるメロディーと心に刺さる歌詞、そして脱力感と透明感を合わせ持った魅力的な歌声が印象的ですが、今回の新曲「バウムクーヘンエンド」の歌詞やMVにはどういった意味合いや想いが込められているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
Eve「バウムクーヘンエンド」歌詞やMVの意味を解釈&考察
ということで早速内容に入っていきたいと思いますが、今回話題を呼んでいるのがこちらのEveさんの新曲「バウムクーヘンエンド」。
まずは「バウムクーヘンエンド」の歌詞について見ていきましょう、MVと同時に公開されたフルバージョンの歌詞全文がこちら。
「バウムクーヘンエンド」Eve
作詞・作曲:Eve空回りばっかでさ これが僕なんだってば
愛想尽かれて 離れ離れの手
優柔不断だってさ 喉まできてんだってば
“かいしんのいちげき” がないようじゃまあ 期待したって 答えはみえてました
このどうしようもないくらいのプライドに
おいていかれてしまいそうな僕は
何も残らない 残りはしない びびってんじゃないか
上手くなっていく 愛想笑いなんです僕なんて どうせ君の前じゃきっと
声に出したって僕は 声に出したって僕は
誰の耳にも届かぬくらいなら
心にしまって 大事にするから思い出したんだ僕は 思い出したんだ僕は
ここで初めて泣いてる君を見た
嘘でもいいから その言葉で救って日常に苛立っては ぶち壊したいんだってば
感情揺すぶられるこの刹那
痛みを知らないまま ここまで来たんだってば
簡単に息ができなくなるああそんなもんか まだ何も伝えてないんだ
このどうしようもないくらいの眩暈に襲われて夜も
越せないと僕ら 後悔などないと思うんだ
ほらまた 愛想笑いなんです僕なんて どうせ君の前じゃきっと
想いを伝えたくて僕は 想いを伝えたくて僕は
過去を変える事などできないけど
明日に期待したいからまだ 終わらないで 大事にするから声に出したって僕は 声に出したって僕は
誰の耳にも届かぬくらいなら
心にしまって 大事にするから思い出したんだ僕は 思い出したんだ僕は
ここで初めて泣いてる君を見た“キミのその一歩が 彩る世界に”
嘘でもいいから その言葉で救って
「バウムクーヘンエンド」の歌詞はこのようなところとなっていましたが、小気味良いメロディーラインと疾走感のある歌詞がとても印象に残る一曲でした。
個人的にはテレビアニメ「どろろ」2期エンディングテーマにも起用された「闇夜」がとても好きでひたすらに鬼リピートしているのですが、今回の「バウムクーヘンエンド」も鬼リピ必須の中毒曲になることは間違いなし。
ちなみに「バウムクーヘンエンド」のMVディレクターを務めたのは「お気に召すまま」「トーキョーゲットー」などのMVも手がけたWabokuさんということで、今回のMVもかなり印象的な作品に仕上がっていました。
さて、それでは今回の「バウムクーヘンエンド」にはどういった意味合いが込められているのか見ていきましょう。
「バウムクーヘンエンド」というタイトルに込められた意味。
まず、そもそものタイトルである「バウムクーヘンエンド」という言葉について。
聞き覚えのあまりない人も多いかもしれませんが、次のような意味合いの言葉としてネットスラング的に使われていることで知られています。
いかにも結ばれそうな、自他共に認める仲のいい二人組の片割れが、物語の中で他の相手と結ばれること。
なぜ「バウムクーヘンエンド」という呼び方になったのかというと、「非常に仲が良かった2人の片割れが結婚し、もう1人が披露宴でのスピーチを頼まれ笑いまで取ったりと如才なくこなすのですが、家に帰った後に1人で引き出物のバウムクーヘンを食べる」という意味合いで「バウムクーヘンエンド」という名前が付けられました。
このエピソード(実話ではない)がTwitter上でとある女性ユーザーが友人と2人で酒を飲んでいた際に「好きなカップリングがこういう展開を迎えたら悲しいよね」と盛り上がったネタとして拡散され、ネットを中心に知れ渡るようになっていったというものです。
「Pretender」的な逆らうことのできない運命。
空回りばっかでさ これが僕なんだってば
愛想尽かれて 離れ離れの手
優柔不断だってさ 喉まできてんだってば
“かいしんのいちげき” がないようじゃまあ 期待したって 答えはみえてました
このどうしようもないくらいのプライドに
おいていかれてしまいそうな僕は
何も残らない 残りはしない びびってんじゃないか
上手くなっていく 愛想笑いなんです僕なんて どうせ君の前じゃきっと
声に出したって僕は 声に出したって僕は
誰の耳にも届かぬくらいなら
心にしまって 大事にするから思い出したんだ僕は 思い出したんだ僕は
ここで初めて泣いてる君を見た
嘘でもいいから その言葉で救って
そういったタイトルの意味合いを踏まえた上で歌詞についても解釈&考察していきますが、まず前提としてバウムクーヘンエンドという言葉は片割れの結婚だけでなく「死別」などのケースにも使われることがあります。
今回の「バウムクーヘンエンド」ではとある青年と少女が主軸に置かれていました、そして少女の方は点滴をつけている様子などからどうやら「病」を抱えていることもわかります。
そんな少女の状態をバウムクーヘンエンドと重ねると、青年と少女の2人はそれこそ「2人組」として深い関係性にありながらも、少女が病によって命を落としてしまう可能性があることも示唆されているように感じました。
実際に歌詞の中にも「ここで初めて泣いてる君を見た」というフレーズがありますが、少女は自身の病に対して抗うことができず、涙を流していたのではないでしょうか。
そうして逆らうことのできない運命を取り扱っているという点では、ヒゲダンことOfficial髭男dismの「Pretender」を彷彿とさせる部分もあります。
こちらは叶わない恋を歌った楽曲ではありましたが、同じく「抗うことのできない運命」に対峙した主人公という点においては共通している部分があるでしょう。
ただしそんな運命を受け入れ「グッバイ」と別れを告げたヒゲダンに対して、Eveさんは抗うことのできない運命を「変える」ことに踏み込んだような気もします。
伝えられない言葉が喉から出ないことを「”かいしんのいちげき” がないようじゃ」と例えたのはとても印象深かったですが、プライドに邪魔されながらも、「どうせ」と自分に自信を失くしながらも、それでも青年が「現状を打破しようとする姿」が続く歌詞では描かれていました。
バウムクーヘンは「少女の心の扉を開く鍵」のようにも思える。
日常に苛立っては ぶち壊したいんだってば
感情揺すぶられるこの刹那
痛みを知らないまま ここまで来たんだってば
簡単に息ができなくなるああそんなもんか まだ何も伝えてないんだ
このどうしようもないくらいの眩暈に襲われて夜も
越せないと僕ら 後悔などないと思うんだ
ほらまた 愛想笑いなんです僕なんて どうせ君の前じゃきっと
想いを伝えたくて僕は 想いを伝えたくて僕は
過去を変える事などできないけど
明日に期待したいからまだ 終わらないで 大事にするから声に出したって僕は 声に出したって僕は
誰の耳にも届かぬくらいなら
心にしまって 大事にするから
少女は自身の病に対する苛立ちや感情の揺さぶりに苦しめられており、青年もまたそんな少女を救うことのできない自分の不甲斐なさに遣る瀬無い思いを抱えています。
何度も何度も「どうせ」と、「僕なんて」と、自分を責めることばかりしてしまうのでした。
でも、Eveさんの作品ではちょっとおなじみになっている怪物のようなキャラクターたち(以下怪物くん)が、そんな青年の背中を押しているようにも感じました。
ちなみにこれは個人的な解釈にはなりますが、今回のMVで登場する「バウムクーヘン」は「少女の心の扉を開く鍵」を指しているようにも思えます。
それは青年が鍵をくるくると回している描写やバウムクーヘンが「穴が空いている」という特徴があることからも、心を閉ざしてしまっている少女の「鍵」が青年自身であるという例えとして、バウムクーヘンを登場させているのではないでしょうか。
実際にとあるケーキ屋さんで青年が「区切られたバウムクーヘン」を指さすシーンでは自分に対する自信のなさを象徴しており、一方で青年の周囲にいた怪物くんたちは「まん丸のバウムクーヘン」を指さしており、これは青年に対して「彼女の心の扉を開くのは君しかいないんだよ」「自信持てよ」と言っているようにも見えました。
ちなみに余談にはなりますが怪物くんが指をくるくると回すシーンは、「ナンセンス文学」の後半で同じく目玉の怪物くんが指をくるくると回すシーンにも似ています。
ナンセンス文学では主人公の青年が目玉の怪物くんに頭をゴチャゴチャされて生まれ変わるようなシーンが描かれていましたが、それと似たように今回の「バウムクーヘンエンド」でも青年が生まれ変わるための手助けを怪物くんたちはしてくれていたように感じました。
運命になんて負けない、強く純粋な青年の想い。
思い出したんだ僕は 思い出したんだ僕は
ここで初めて泣いてる君を見た“キミのその一歩が 彩る世界に”
嘘でもいいから その言葉で救って
そして、物語の最も印象的なラストシーン。最後には少女の不安・葛藤・憎悪・悲しみ・苦しみなどの感情が一気に溢れ出し、街を壊し暴れまわる怪物にまで膨れ上がってしまいます。
しかし、そんな少女の姿を見てそれこそ「初めて泣いてる君」の姿を思い出した青年は、ずっと伝えたかった言葉で少女を救う決意をしたのでした。
怪物くんもそんな青年をバウムクーヘンを指でくるくると回し投げたように少女の元へと投げるのですが、このシーンが個人的にとても好きで、それこそサマーウォーズの「よろしくお願いしまあああああぁああぁす!!」みたいな最高潮の興奮!って感じで。
それはまさに少女の閉ざしていた心に鍵を投げかけるかのようで、青年自身が鍵となって少女の元へと向かうかのようで、圧倒的に格好良いシーンだと思います。
そして、膝を抱え塞ぎ込む少女の元へ青年は飛び、手を掴む。「キミのその一歩が 彩る世界に」という、一番伝えたかった言葉を伝えるために。
この物語は実際に少女を救ったという描写こそは描かれていないものの、青年が少女の閉ざされた心を開く1つのきっかけに、新たな一歩を踏み出すきっかけになったことは間違いないでしょう。
その姿はネット上で揶揄される「バウムクーヘンエンド」というどこか虚しい運命の物語に対するアンチテーゼであるかのようで、「運命で全てが決まるなんてふざけんな」と、自分の手で運命すらも変えてみせるという青年の情熱的で限りなく純粋な想いを象徴しているかのようでした。
何より決められたもの、抗えないもの、自信がないこと、その中で葛藤し時には諦めそうになりながらも、自分の意思と想いには背きたくはない。
それは少女という1人の大切な存在があるからであって、そんな少女の存在によって青年は生まれ変わり、そして少女もまた青年の勇気ある一歩によって生まれ変わることができるのかもしれません。
そうして変えられないはずだった運命を変え、変われないはずだった自分を変える奇跡の物語が、「バウムクーヘンエンド」の世界では描かれていたように感じました。
まとめ
ということで今回は、Eveさんの「バウムクーヘンエンド」の歌詞やMVの意味を解釈&考察してきました。
これまでにも「ドラマツルギー」「お気に召すまま」「闇夜」など数多くの人気作品を公開してきたEveさんですが、今回の「バウムクーヘンエンド」も間違いなく数多くのファンの心を打つ人気曲になることは間違いないでしょう。
ちょうど9月手前という夏の終わりにもぴったりな純粋で、熱く、そして美しいストーリーの楽曲で、自分も2019年の夏の最後にこの「バウムクーヘンエンド」に出会えて良かったとしみじみ感じました。
またEveさんの新たなる新曲に期待しながら、引き続き今後の活動も応援していきたいと思います。素敵な楽曲をありがとうございました。